まあ素敵なもみじ!!
そう感じる庭木のもみじは、手慣れた家主や庭師によってガッツリ剪定や手入れがしてあるはずです。
自然に伸びているように見える枝や涼しげに揺れる葉っぱなどは、じつは計算されたもの。適切に剪定してこそ、もみじの美しさは保たれます。
そのため
庭のモミジが大きくなりすぎたのでボリュームを減らしたい
もみじの葉がもっさりしすぎているので透かしたい
そのような行き当たりばったりのタイミングで、むやみに枝を切り落としてはいけません。
不格好な樹形になってしまうだけでなく、木を弱らせたり枯らしてしまったりすることがあるからです。もみじは適切な時期や方法で剪定し、美しい樹形に整えましょう。
この記事では
もみじ剪定で失敗しないコツ
をわかりやすく解説します。じっさいに剪定してみた様子も公開しますので、もみじ剪定をおこなうときの参考にしていただければ幸いです。
もみじ剪定のコツ1:ベストな時期に剪定をする
剪定は生きている枝を切り取ることであり、人間でたとえると手術のようなもの。ダメージを最小限にするため、剪定は休眠期におこなうのが基本です。
もみじの冬剪定は落葉後の12月が理想
一般的な落葉樹は、落葉してから休眠期に入り、2月ごろまでが剪定時期となります。しかしもみじの休眠期は短く、1月下旬には活動をはじめます。
そのため、もみじの剪定は落葉後の12月中におこなうのがベストです。
落葉後は葉っぱがないので剪定しやすく、ゴミの量が少ないというメリットもあります。不要な枝は冬剪定でしっかり切り落としておきましょう。
大胆な樹形のコントロールも、樹木へのダメージの少ない休眠期におこないます。
もみじの夏剪定は最小限に!
もみじの活動期となる夏に剪定するのは失敗のもと!
次のようなリスクがあるため、基本的にはおススメしません。
もみじは夏になると樹勢*が強くなります。そのため剪定で葉っぱを大量に失った樹木は、危機感を強めて急速にリカバリーしようとします。剪定で切り落とした部分に集中して栄養を送り込むため、樹木全体の体力は消耗し、弱ってしまうのです。
また切り口から枝が勢いよく出てきたり、芽や葉が思わぬ場所から飛び出してくることがあります。スッキリさせようとして、逆に枝葉が増えることもあるのです。
このような理由から、夏場に枝葉がもっさりして樹形がくずれていても、なるべく落葉後まで剪定せず待つのがおススメです。
また枝が敷地からはみ出て危険、近所からクレームが来た、といった緊急事態の場合には、あわてて自分で剪定せずプロに相談しましょう。
もみじ剪定のコツ2:不要な枝は根元から切り落とす(冬剪定)
枝をカットするときには、枝分かれしている根元から切り落とすのが失敗しないコツです。枝の途中でぶつ切りしてはいけません。
元気な枝を途中で切ると、そこから反抗するように複数の枝が伸びてきます。上や下、横にいくつかの枝が伸び放題になり、不気味な見た目になってしまうからです。
そのため不要な枝は必ず根元から切り落とし、そこから新しい芽が出てこないようにしましょう。
切り落とすべき不要枝【イラストで確認】

もみじ剪定の基本は「透かし剪定(間引き剪定ともいう)」です。透かし剪定とは、密集している枝をカットして減らす剪定方法になります。
透かし剪定の目的は、風通しや日当たりをよくすることです。
剪定時には葉っぱがなくてスッキリしていますが、葉が生い茂ってくると想定外にもっさりしてくるものです。不要枝は遠慮なく切り落として、スッキリさせておきましょう。
枝分かれがYの字になるように剪定する
もみじの枝先は、Y字に伸ばしていくと樹形が整います。
枝が自然とY字に伸びていくことは多いものの、余分な枝や芽が伸びてくるケースがあるので、剪定して調整しましょう。
たとえばY字の中心に芯のような勢いのある枝が伸びることがあります。中心の強い枝は根元から切り落としましょう。そうすると伸びる勢いが左右に分散されます。

また脇から出る余分な枝も切り落としましょう。Y字に整えるときに、残す枝に迷うことがあります。その場合は、内側に向かっている枝や枯れそうな枝をカットし、外へ向かう元気な枝を残します。
それでも迷う場合は、
- 若いほうの枝
- 先端が赤くなっている枝
を残すようにしましょう。
もみじ剪定のコツ3:太い枝は少しずつ切り落とす(冬剪定)
のこぎりを使って太い枝を切り落とすときは、枝先側から少しずつカットします。いきなり枝の根元に切り込みを入れると、枝の重みで幹が裂けてしまう心配があるからです。
太い枝を切り落とす手順(3ステップ)
太い枝を根元から切り落とすときには、3ステップで作業を進めます。

太い枝の剪定手順
- 枝の根元から少し枝先側の位置で、枝の下側に1/3ほど切り込みを入れる
- 切り込みから少し枝先側の位置で、枝を上から切り落とす
- 枝の根元に残った部分を切り落とす
ブランチカラー(枝元のコブ)は残して切り落とそう
の残し方.jpg)
枝の根元にふっくらとしたコブのような盛り上がりがある場合は、切り落とさないようにしましょう。幹と枝の間にある膨らんだ部分はブランチカラーといって、栄養がつまっている場所です。
ブランチカラーは、枝を切ったときに切り口を包み込むようにふさいでくれる大事な部分です。ブランチカラーを切ってしまうと、剪定後の切り口がふさがりにくく、幹にもダメージを与えます。
ブランチカラーを切ってスッキリさせたいところですが、切り落とさないのが樹木のためです。
また枝の根元の上部には、樹皮があつまってシワのようになっている部分があります。樹皮が集まったシワはバークブリッジといって、枝と幹の境目を示してくれています。
太い枝の剪定では、バークブリッジと、ブランチカラーの枝先側を結んだラインで切り落としてください。 このラインでのカット方法をナチュラルターゲットカットと呼びます。
枝を切り終えたら、切り口を保護するため、癒合材を綿布しておきましょう。
樹木に負担をかけてしまうカット方法
次のようなカット方法は、樹木に負担をかけることになるので避けましょう。

①フラッシュカット
枝を幹に沿って切り、平らになるよう剪定する方法です。スッキリした見た目に仕上がるものの、幹へのダメージが大きいのでおススメできません。
②スタブカット
幹から離れたところでカットする剪定方法です。切り口をふさぐことがむずかしく、枯れてしまうおそれがあるのでおススメできません。
夏場はカミキリムシの食害に注意!
夏場にはさまざまなムシが発生しますが、もみじの場合はカミキリムシによる食害に注意しましょう。カミキリムシにかじられた部分は枯れてしまうので深刻です。
カミキリムシの存在をたしかめる方法
カミキリムシの存在を確認するため、毎日木の下をチェックしましょう。木の下におがくずがあれば、カミキリムシの幼虫のしわざです。
カミキリムシの幼虫は、木に鉄砲で打ったような小さな穴をあけて侵入することから、「テッポウムシ」とも呼ばれます。テッポウムシは木を内部から食い荒らし、1~2年かけて成虫となるのです。
成虫となったカミキリムシは、直径1cmほどの穴をあけて外へ出ていきます。
カミキリムシの予防方法
カミキリムシの成虫は、幹をかじったり幹の下部や根元に産卵したりします。そのため成虫のカミキリムシを寄せ付けない予防が重要です。
カミキリムシの予防方法は次の3つです。
酢を散布する
酢はカミキリムシに対する忌避効果があります。6~7月にかけて、酢を幹や枝に散布してみましょう。
木の生育環境を改善する
カミキリムシは弱っている木を好みますので、生育環境を整え、木を健康な状態に保つことが、効果的なカミキリムシ予防となります。
樹勢が強ければ、樹液やヤニが多く出て甲虫類の幼虫を死なせる効果があるからです。
木に栄養を与えたり、適切な剪定をおこなったりして生育環境を整えておきましょう。
予防樹脂フィルムを使う
ぬりつけるタイプの予防樹脂フィルムも、安全で効果があります。カミキリムシの産卵場所となりやすい高さ50cmほどまでの木の根元に塗ってみましょう。
カミキリムシの退治方法
カミキリムシの成虫を見つけたときには、手で捕獲してください。動きが遅く、比較的簡単に捕獲できるので殺虫剤は必要ありません。
カミキリムシの幼虫であるテッポウムシを退治するには、ノズル付きの専用殺虫剤が便利です。ノズルを木の穴に深く差し込んで噴射しておきましょう。
12月に庭木のイロハモミジを剪定してみた!
毎年12月下旬に庭の剪定をするという編集部スタッフのMさん宅。3m近くにもなるもみじの木の剪定もおこなうとのことで、その様子を拝見…。詳細を紹介します。
剪定の道具
はじめに剪定に使う道具を準備します。ハサミは2種類。
ひとつめはメインで使う剪定バサミ

ほとんどの枝はこの剪定バサミで切り落としていきます。握るだけで簡単にカット!!
次に高枝切りバサミ。

長さ約3mの高枝切りバサミです。手元のグリップを握れば、棒の先のハサミ部分でカットできる優れもの。庭木の剪定には必需品です。
遠くから見て完成イメージを確認

まずは遠くから見て、どのくらいの大きさまで切り落とすのか、樹形の完成イメージをつかんでおきます。写真に撮って確認しました。
落葉の時期、2階のベランダに落ち葉がたまって困るので、ベランダより低い位置までに高さを抑えるカットをしていきます。
下から見て枝の流れを確認

続いて木の下から見上げて、落とす枝を決めます。
込み合っている枝や重なり合っているところは、しっかり透かし剪定をしていきましょう。昨年、剪定が足りないなと感じたので、枝を思い切って減らしていく予定です。
不要な枝を付け根から切り落とす
いよいよ剪定をしていきます。枝を切るときには、枝の付け根から切り落とすのが基本!
高さを抑えるため、頂点の枝をカットします。

続いて大きめの枝をカットしていきます。
長い枝が2本に分かれて伸びているため、片方を切り落とします。↓


枝先が3本に分かれている場合は、勢いよく伸びている枝を1本カットしてY字になるよう2本残します。↓
3本に枝分かれしているので、右の枝を1本切り落とします。


3本に枝分かれしていたものを1本切り落としたのでY字に整いました。
幹ぶき枝のカット

幹から直接生えている細い枝が幹ぶき枝です。幹ぶき枝を放置すると、栄養分が吸い取られてしまうので残さず切っておきます!!
左右対称に生えている細かい枝は、片方切り落としていきます。
右ばかり・左ばかりにかたよらないよう、左右バランスよく切り落とします。


枝先がスッキリしました。
下から見上げて、込み合っているところを見つけては減らしていきます。
高くて届かないところは、脚立を使って作業!!

切る→下から確認→切る→下から確認
下から見たり、引きで遠くから見たりします。
込み合っているところの枝をどんどん減らし、透かしていきました!

剪定→遠くから見る→剪定→遠くから見る
これらを繰り返すこと約2時間=====
剪定の完成です。
スッキリ!!
おつかれさまでした。剪定後の様子も写真に撮って確認します。
最後に集めたゴミはこちら。

自治体の決まりにしたがい、指定袋に入れてゴミ出しをすれば完了です。
今のところ夫婦二人で剪定作業をしています。わたしが下や遠くから確認して込み合っているところを指示、夫がハサミでカットしていくという共同作業です。
一番大変なのは枝を切り落とすときです。直径1cmを超える枝を切り落とすのは簡単ではありません。ギュッと力を入れて2~3回に分けてようやく切れます。
また高いところの剪定をするときには脚立を使います。上って作業するのは大変危険ですので、脚立に乗るときには、下で支える人も必要です。
このように剪定作業はひとりではむずかしいので、ひとりではなく複数でおこなうのがおススメです。
もみじ剪定をプロに任せる費用相場
もみじの剪定は自分でおこなうこともできますが、
- 木が大きくなって手に負えなくなった
- 体力や腕力に自信がない
- 時間がない
といったケースもあることでしょう。その場合には剪定をプロに任せるという手もあります。
プロに任せる場合の費用は次のとおりです。
庭のお手入れサービス相場
木の高さ | 費用相場 |
---|---|
低木(高さ 3m未満) | 3,000~5,000円 |
中木(高さ 3~5m) | 6,000~9,000円 |
高木(高さ 5m以上) | 11,000~30,000円 |
くわしい剪定料金や内訳、料金を安く依頼するコツはこちらの記事でくわしく解説していますので参考にしてください。
