大きくなりすぎたフィカスをどうする!? 元花屋さんが教える、観葉植物の剪定と挿し木での殖やし方

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大きくなりすぎた観葉植物をどうしよう?

部屋に彩りを、心に癒しを与えてくれる観葉植物。ご自宅や仕事場でお持ちの方も多いでしょうが、「大事に育てていたら、思ったよりも大きくなりすぎた!」というお声もよく耳にします。

元花屋の筆者も、家に無数の植物があるのですが、成長しすぎて人間の居住区を圧迫し始めたものもちらほら……。たとえばこちら、フィカス・バーガンディ。

フィカス・バーガンディの説明

購入した際は1,000円以下の小さな鉢でしたが、2年ほどで筆者の身長を超えそうな勢いに迫っています。このままだと天井まっしぐらなので、思い切って剪定してしまいたいところ……。

こんなとき、「自分で切っても植物は枯れない?」「剪定っていつすればいいの?」と不安になりますよね。

今回は春に向けて、こちらのフィカス・バーガンディをベースに、植物にやさしい剪定の仕方をご紹介。

ベンガレンシスやガジュマルなど、フィカス属を育てている方はもちろん、その他の観葉植物をお持ちの方も参考になさってみてください。

目次

冬に切っちゃだめ! 植物の剪定のきほん

植物の種類によって「水はたっぷりが好き」とか「日向が好き」とかの個性があるように、剪定の方法も少しずつ異なります。

今回解説する方法は、上記のフィカス・バーガンディやフィカス・ティネケなどには有効ですが、それ以外の植物に試される際は、お持ちの植物の特性を調べた上で実施していただくことをおすすめします。

その上で、ほとんどの植物に共通する剪定時の注意事項……それは、「真夏や真冬に切らない」こと。

常に温かいお部屋や、ビニールハウスで育てられている植物などを除いて、冬は休眠期にあたります。植物自身が省エネモードになって冬を乗り越えようとしているところなので、無理に剪定してしまうと、その部分の修復に体力を使いすぎて枯れてしまうことも。また、切り口に雑菌が入った場合に対処する免疫力も落ちています。

剪定は植物の成長期、室温が常に15〜25℃になる時期に行いましょう。関東なら4〜6月くらいがおすすめ。

また、温度の高い日に剪定をすると、雑菌の繁殖を助けてしまう場合があるため、乾燥して風通しのいい日を選んで剪定するようにしましょう。

適温に置かれた観葉植物は成長が旺盛なため、切ってもすぐに新しい芽を出してくれます。

どこを切るべき? 剪定する場所と必要な道具

必要な道具
  • 清潔な枝切りバサミ
  • 使い捨ての手袋(ゴム手袋など、液体を通さず枝に触れたときに破れないもの)

    ※フィカスの樹液は、ラテックスアレルギーをお持ちの方、肌が弱い方は触れた際にかぶれる可能性があります。剪定の際は必ず手袋をしてください。

切り花用のハサミだと歯が立たないことがあるので、よく切れる枝切り鋏を用意しましょう。ハサミについた雑菌が植物に入り込まないよう、あらかじめよく洗って乾かしておくか、消毒用のアルコールを吹きかけて拭き上げておきます。

フィカス・バーガンディの成長点

葉が出ている根本、その少し上に、小さな点があるのがお分かりでしょうか(フィカス・バーガンディは新芽が赤いため、赤い点を探していただければすぐ見つかります)。これは成長点といって、脇芽が出てくる部分。

今は植物の頂点だけが頑張って伸びようとしている状態なので、写真の成長点は眠っていますが、剪定することで成長を促せます。

フィカス・バーガンディを剪定すると、切った部分に一番近い成長点から新芽が伸びてきます(これはフィカス・ウンベラータ等も同様です)。

フィカス・バーガンディの剪定方法1

ということで、カットする位置はこのあたり。成長点を傷つけないよう、少し上で切るのがポイントです。

ゴムの木の仲間であるフィカス属は、切るとそこから白い樹液が溢れてきます。最初は驚かれるかもしれませんが、この樹液は決して拭いてはいけません。切り口から溢れ出るままにしておいてください。拭いてしまうとそこから雑菌が入り、枯れてしまうこともあるため、自然にカサブタができるのを待ちましょう。

「癒合剤」

フィカス以外の植物の剪定で、樹液が溢れてこない種類の場合は、「癒合剤」と呼ばれる保護剤を使用し、切り口を保護するようにします。
剪定された植物は身体の一部を失い、怪我をしているような状態。放置するとそこから雑菌が入り枯れてしまう場合があります。

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どういうときに剪定する?

お持ちの観葉植物が健康で、大きさにも特に問題がないのであれば、剪定しなくても大丈夫です。

徒長(日照不足で枝が間延びすること)している場合や、サイズをコンパクトに仕立て直したい場合などに効果的ですが、剪定をすることで植物も体力も消耗するため、あまり頻繁には行わないようにしましょう。

切った枝を捨てちゃうなんてもったいない!挿し木で増やす方法

植物の種類にもよりますが、剪定した枝は挿し木という方法で、新たな株を増やすことができます。挿し木は簡単ですが、切り方に少しコツが必要。

フィカス・バーガンディの挿し木の方法1

図のように、枝分かれごとにカットし、葉も半分に切り詰めてしまいます。これは葉っぱからの水分の蒸散を防ぐため。
先端の一番新しい芽はそのまま成長してくれることが多いため、残すようにしましょう。

フィカス・バーガンディの挿し木の方法2

この状態で水に浸けておくと、やがて根っこが出てきます(植物の種類によっては水の中で発根せず、直接土に植える必要があります)。

水はふつうの水道水で構いませんが、メネデールなどの活力剤を加えておくのがおすすめ。

活力剤「メネデール」

メネデールは植物にとってのサプリメントのようなもので、根っこの成長を促進してくれます。活力剤は、種類によっては挿し木に使えない場合があるので、必ず用途をご確認の上で使用してください。

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この段階で気をつけたいのが、挿し木を入れた水を腐らせてしまうこと。特に温かい時期は雑菌が繁殖しやすいため、2〜3日に一度は水を替え、常に新鮮な水が吸えるようにしておきます。

白い根っこが出てきたらすぐに土に植え替えます。おすすめは赤玉土か、鹿沼土で粒が細かいもの。挿し芽用の土なども市販されていますが、保水力が高いので根腐れさせないよう注意しましょう。

フィカス・バーガンディの挿し木の方法3
割り箸などで穴を開けてから茎を挿し込むと先端がつぶれづらいです

鉢に十分な深さの土を入れたら、発根した枝を挿して水をやり、その後は土の表面が乾いたら、鉢底から溢れるくらいたっぷり水やりを続けます。

新芽が出てきたら挿し木成功。そのまま順調に成長するようなら、観葉植物用の土に植え替えましょう。

樹形を整えたいときは……

目につく場所に置かれる観葉植物は、できればきれいな樹形に仕立てたいものですよね。

枝を整える際のポイントを、下記にパターンごとに記載しましたので、剪定の際の参考になさってみてください。

葉が枯れてしまった植物を復活させたい

フィカス属をはじめ多くの植物の場合、一度枯れてしまった葉が再生することはありません。ただし、樹そのものが生きている場合は、枯れた部分をきれいなハサミで切り取り、適切な環境に置くことで新しい葉が出てきます。

こちらも春〜初夏の温かい季節に行ってください。

すでに枝分かれしている個体で、思った方向に枝を伸ばしたい

たとえば、フィカスの枝が人がよく通る場所に伸びてきてしまって、少し邪魔だなあという場合。フィカス・バーガンディやティネケ、ウンベラータの場合、剪定した場所(新たにできた先端)に一番近い成長点から発芽してきます。

成長点から葉が出た場合にどういう形になるかを想像しながら剪定すると、思った形にしやすいですよ。

二股に枝分かれさせたい

フィカス・バーガンディなどの場合、剪定に成功すれば枝が二股に分かれてきます。

ただし、植物の状態や個体の性質によっては枝分かれせず、先端の成長点一箇所だけから新芽が出てくる場合もあります(栄養不足の際などによく起こります)。

大型観葉植物として販売・レンタルされている、樹形が整った個体は数年〜数十年かけて造られていることが多いです。焦らずに、植物の状態をよく観察しながら剪定を行うようにしましょう。

フィカス属は生命力が強いため、剪定するのも、挿し木で殖やすのも簡単です。大きくなりすぎた観葉植物を処分してしまう前に、ぜひ試してみてくださいね。

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ライター

JUNERAYのアバター JUNERAY ライター

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、クラフトビアアソシエーション認定ビアテイスター。元家具屋で花屋でバーテンダー。デイリーポータルZ、オモコロなどで執筆中。古い賃貸マンションを酒と花だらけにして暮らしている。

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