1896年(明治29年)創業のアズマ工業は、家庭向け掃除用品メーカーの老舗。
ほうきの製造からスタートし、現在では洗剤や掃除道具の企画から販売、ハウスクリーニング事業まで展開されています。
これまで数々の掃除用品をてがけてきた会社なら、ヒット商品もあれば、なぜか売れない商品もあるのでは?
という若干失礼な質問をぶつけてみたところ、
- 【ヒット商品】年間93万個を売り上げた高性能クロス
- 【ヒット商品】類似品が多発したスキマクリーナー
- 【ノンヒット商品】社長発案のスポンジワイパー
以上、3品を快く(重要)紹介いただきました。
ノンヒット商品に関しては、
「社長にもこれを紹介していいですよね。と確認したら、なんの異論もなかったです(笑)」
とのこと。(心の広い社長さんに感謝!)
今回は、126年の歴史あるアズマ工業のヒット商品とノンヒット商品の違いに迫ります!
\お話を伺ったのはこの方/
開発部 係長 高嶋ゆかりさん

これまでに、フローリングクリーナーやハンドモップなど、さまざまな清掃具を開発されています。
取材協力:アズマ工業
アズマ工業株式会社の掃除アイテム「アズマックス」シリーズを紹介するコラムはコチラ⇒「アズマ工業に聞く!知られざる「アズマジック」の世界。プロ推奨のスゴ落ち洗剤&研磨布」
約40年のロングセラー!「TKふしぎクロス」


「TKふしぎクロス※以下ふしぎクロス」は、1984年の発売以来、ずっと売れ続けている商品です。最高で、年間93万枚を販売した実績があります。
一度使っていただいた方は、ずっと愛用してくださっていて、リピーターさんも多いです。
──93万枚!約ミリオンですね。何がそんなに人を惹きつけるんでしょうか?



吸水性の高さですね。「ふしぎクロス」は、水分の吸収性がすごくいいレーヨン素材でできています。レーヨンの毛を立たせることで、表面積が大きくなり、吸水性をさらによくしているんです。他の素材や織り方だと、そこまで吸水性はありません。


──手触りがモフモフしていますね。どうやって使うんですか?



水で洗ってから使用してください。また、使い始めは若干色落ちするため、色物はよく洗ってください。





以前モニターさんから、とにかく拭き上がりが素晴らしいというお声をいただきました。拭き取る時に、水のあとを残さないんですよ。
──濡れているクロスで拭き上げると、少し湿り気が残りがちですが、それがないんですね。




水だけで汚れが落ちる!不思議なクロス



じつは、ヒットした理由はもうひとつあるんです。
──えっ!?



「ふしぎクロス」は汚れを拭いた後、クロスについた汚れが水だけで落ちるんです。というのも、レーヨンは水は吸いますが、汚れは吸わないんですよ。例えばしょう油やソースを拭いても、水をかけるだけでファーっと落とせます。








──すごい!本当にしょう油が水だけで落ちますね。



水だけで汚れが落ちる利便性、コレ一枚あればかなりの面積を拭くことができる高い吸水性。そういった使い勝手の良さが、ヒットにつながっているんだと思います。
──クロスは汚れが付くと漂白したり、洗濯したりと、けっこう扱いがめんどうだったりするんですよね。これはいいですね。


長くヒットしている商品ゆえのエピソードも。



じつは生産が追いつかなくて、生産場所を増やしたんですね。その時に、何十年も愛用されていたお客様から、「「ふしぎクロス」がいつもと違う」と、生産場所が違うことに気付かれた方がいらっしゃったんですよ。
──驚愕!



私達でも気が付かない変化がわかるほど、お客様の思い入れが強い商品なんです。アズマにはそういった商品はいくつかあるんですが、「ふしぎクロス」に関しては特別だと思います。
──生産者よりも、お客様のほうが「ふしぎクロス」への愛が深いんですね。すごい!
愛用者が多い理由、ほかにもありますか?



耐久性ですね。レーヨンは摩耗していくので、少しずつヘタってはきますが、長く使い込んでいただけるクロスだと思います。
耐久性がいいのは、基布(きふ)と起毛で素材を別にしているからです。開発時は、どちらもレーヨンでしたが、基布がレーヨンだと縮んでしまうという問題がありました。そこで、基布を綿ポリエステル、起毛をレーヨンにして、耐久性をあげたそうです。
──そんな工夫がされているんですね。ヒット商品、奥が深い!



「ふしぎクロス」は吸水性がとてもいいため、キッチンのカウンターやシンクなど、水分を拭き上げたい場所にぴったりです。また、網戸や床拭きなどにも使えます。幅広い用途も魅力のひとつなのかもしれませんね。
「ふしぎクロス」は吸水性がとてもいいため、キッチンのカウンターやシンクなど、水分を拭き上げたい場所にぴったりです。また、網戸や床拭きなどにも使えます。幅広い用途も魅力のひとつなのかもしれませんね。
「ふしぎクロス」に使われている起毛のレーヨン生地は、もともとは別の商品になるはずだったそう。しかし、その耐久性や吸水力の高さから、もっと素材を活かした商品が作れないかという声があがり「ふしぎクロス」が誕生したんだそうです。
これが元祖!スキマ掃除道具「BA717シートでスキマキーレー」





2つ目のヒット商品は、「BA717シートでスキマキーレー※以下スキマキーレー」です。よく似た商品がありますが、これが元祖です(笑)。10年以上前から販売しています。
──スキマを掃除する道具ですね!これが元祖!


- 本体にお掃除シートを付けていきます
- 片方のお掃除シートを本体に重ねて
- もう一方も重ねます
- 本体の差し込み口にお掃除シートをグッと入れ込みます





板状の部分で約1cm、柄を入れても約1.5cmのせまいスキマに入るので、冷蔵庫の下の掃除にもってこいなんですよ。





「スキマキーレー」は、柄の長さが67cmのショートタイプと138cmのロングタイプの2種類を展開しています。ロングタイプは奥行きがあるベッドの下や、壁や天井のホコリを取ることができるんです。




こだわりの“しなり”が決め手!



柄は、しなる設計になっています。理由は、掃除する時に力が伝わりやすくて、立ったままでもスキマに差し込めるようにするためです。
ロングの方は、配送の関係で柄を4つに分ける必要があったため、その分、しなりを出すのに苦労したそうです。


──計算された”しなり”なんですね。



また、先の方も”しなる”ひと工夫が施されています。しなるように、先端にいくに従って面が薄くなっているんです。


──”しなり”へのこだわりがハンパない!



「スキマキーレー」は、柄に磁石が付いているタイプ、モップを装着できるタイプなど、シリーズが豊富なんです。磁石付きは、洗濯機や冷蔵庫に貼り付けて収納できます。
高嶋さん曰く「軽いので、お子さんに掃除を手伝ってもらう時にも役立ちますよ」とのこと。
スキマ掃除だけでは留まらない「スキマキーレー」、使い方はアイデア次第です!
この商品を開発したきっかけは、付属の「ふんわりワイパーシート」。
当時、単品で発売されていた「ふんわりワイパーシート」をもっと普及させるために、いい道具が欲しいという販売部門からのオーダーがあり、「スキマキーレー」が誕生したそうです。
名品なのにヒットしない…「FL374階段にも便利なスポンジワイパーF」


ラストは、名品なのに売り上げにつながらないという「FL374階段にも便利なスポンジワイパーF※以下『階段にも便利なスポンジワイパーF』」。



先代の社長の「うちは、ほうき屋さんからはじまった会社だから、ほうきみたいに使えるフローリングワイパーが欲しい」という鶴の一声から生まれた商品です。ほうきへの強いこだわりが込められています。
ということで、まずは動画で使い方をチェック!



床が拭けるのはもちろんですが、ほうきのように掃くこともできます。ヘッドが直角になっているので、巾木(はばき)や階段など角があるところでも掃除できるんです。








──すごい!ヘッドの活躍ぶりが素晴らしいです!



ヘッドの開発は大変だったと聞いています。
掃くためのかたち、素材の選定など。通常のフローリングワイパーのヘッドは平たくて少し硬い素材ですが、「階段にも便利なスポンジワイパーF」はぴっちり対象物に合うようにソフトなスポンジが使われています。







スポンジを付ける部分は、スポンジを挟み込むように付けられています。
ほうきで掃くように使うので、ただ接着しているだけだと、スポンジがポロっと取れてしまうんです。耐久性を良くするために、考え抜かれた付け方なんですよ。


──アイデア満載!
最初に見た時は、不思議なかたちの商品だなぁと思ったのですが、お話しを伺うと、商品のすごさがよくわかります。



そうなんですよ。不思議なかたちで、使う時のイメージがわかないから、ヒットしない…。先代の社長の思いとしては、掃いたり、掃き寄せたりという日本的な行為にすごくこだわりをもっていたんです。




先代の社長のこだわりが込められているんですね。
約6回廃盤しても復活する理由とは?



じつは「階段にも便利なスポンジワイパーF」は、6回ぐらい廃盤になっていて(笑)今販売中のものは、改良して復刻した商品になります。
──えぇ!?



笑ってくれていいんですよ(笑)。やはりフローリングワイパーに見えないので、なかなか良さが伝わらないんだと思います。
でも、廃盤になると、お客様から電話がかかってきて「なんであんないい商品をなくしちゃったんだ」と怒られる、というのを繰り返すらしいんですよ。
──ファンがいるんですね!



使ってくれてファンになってくれる人はいるんですよ!(笑)
──隠れた名品として紹介いただいた理由がよくわかりました(笑)
「階段にも便利なスポンジワイパーF」は、手にとって使うと良さがわかる商品です。
じっさい、店頭で実演販売すると売れると高嶋さんはおっしゃっていました。
ほうき屋さんとしての誇りを感じられる名品、ぜひ一度お試しあれ!
約6回も廃盤になっている「階段にも便利なスポンジワイパーF」。
悩みのタネである「良さが伝わらない問題」を解決するため、復刻時には何度かマイナーチェンジしているんだとか。
例えば、パッケージを商品の使い方や形状が分かりやすいデザインにしたり、柄を収納しやすいよう伸縮にしたりと、試行錯誤を繰り返しているそうです。また販売当初は値段が高かったため、工夫をして商品を簡素化し、価格を下げるといったことまでも!
先代の社長の「ほうき屋魂」が、ここまで引き継がれている「階段にも便利なスポンジワイパーF」、すごすぎます!
まとめ
ヒット商品と名品なのにヒットしなかった商品。
どちらも、妥協のないこだわりとアイデアが詰まった掃除用品には間違いありません。
唯一の違いは「使い方がわかりやすいか、そうでないか」ということ。
「階段にも便利なスポンジワイパーF」も、使い方さえ伝わればヒット間違いなしの商品だと思います。だって、約6回も復刻するほど、熱狂的なファンがいる商品なんですから!
今回紹介した商品は、アズマ工業さんのサイトから購入できるので、気になった方はチェックしてみてくださいね。
販売サイト:快適百貨 本店
※価格はすべて税込み。4/12現在の快適百貨の価格です